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お知らせ・イベント情報

(慶應義塾長からのメッセージ)東北地方太平洋沖地震後の状況への慶應義塾の対応について

概要

3月11日午後に発生した「東北地方太平洋沖地震」は未曾有の地震津波災害となり、被災地の実態を詳しく知るにつれ胸の塞がれる思いです。その犠牲になられた方々に深く哀悼の意を表します。そして全ての被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

現在の状況は極めて厳しいものがあります。まず被災者の救援と被災地の復興を急がなくてはなりません。さらに大きな打撃を受けた日本経済の建て直しも急務ですが、完全な回復にはかなりの時間がかかるでしょう。しかしわれわれは被災者、被災地の救援復興と、日本社会の回復発展をかならず成し遂げねばなりません。

そこで想起すべきは、福澤先生の言われた、実証的な科学という意味の「実学」、物事の軽重を冷静に判断するという意味の「公智」、そして災害などにあって困難な状況にある人を思いやる心という意味の「徳心」です。これらは東北地方太平洋沖地震で被災された方々を救援し、被災地の復興をはかるときに、なによりも大切なものであります。慶應義塾はこの三つを基本にして、被災者の救援、被災地の復興、そしてその先にある日本の経済社会全体の回復とさらなる発展に貢献していきたいと考えています。

塾生や塾員の皆さんは慶應義塾で、実学すなわち科学をもとにした知力を高め、また正しい選択を行うことのできる公智の判断力を磨き、さらに困難な人を思いやる徳の力を養ってこられました。こうした力を結集し、社中力を合わせて、現在非常に困難な時に直面している日本を力強く復活させてほしいと思います。そして新たに塾生となる新入生も含め、そうした力を備えた若者をこれからもしっかりと教育し、実学の基盤となる研究を進め、さらに医療の水準を高めるなど社会的活動の質を高めることを通じて、日本の社会、経済の回復とさらなる発展に寄与することが慶應義塾の社会的使命です。

今日この時点でも多くの方々が避難所等で不安な生活をされていることに心が痛みます。また自らの危険も顧みず救援活動にあたっている消防士、自衛隊員、警察官、行政職員、医療関係者、ボランティアなど多くの方々の献身、さらに米軍も含め国際的にも救援の手が差し伸べられることに、言葉に尽くせぬ敬意と感謝の念を禁じえません。

当面、慶應義塾は、被災者の方々の支援と被災地の復興のために、なしうることから速やかに実行していきたいと考えています。既に慶應連合三田会および全塾協議会とともに、義塾社中をあげて義援金の募集を開始し、また医療支援の一環として慶應義塾救援医療団を被災地に派遣しました。被災された塾生や入学予定の皆さんには学費減免や入学手続および学費等の納入期限の延長、さらに奨学金による支援の準備をしています。また3月末に予定されていた卒業式、学位授与式は中止しウェブ上での式典としましたが、4月の入学式も延期と決定いたしました。これは不安定な電力と交通機関の現状、余震への対応、そして電力消費抑制への配慮などから、一時に多数の人の集まる行事は当面控えるべきという判断によるもので、どうか御理解を頂きたいと思います。

ただし、このように現在もまだ電力や交通事情などについて予断を許さないところはあるものの、教育、研究、医療という本来の仕事については、できる限り平常通りしっかりと進めてまいります。厳しい状況にある日本社会への貢献として、慶應義塾の今なすべき最も重要なことはそこにあると考えるからです。塾生、塾員、教職員の力を合わせて、日本の直面する難局を乗り越えるための貢献をしていきたいと考えています。慶應義塾社中の団結と力の結集を、ここに改めてお願いする次第です。

2011年3月22日
慶應義塾長 清家篤